(文章練習7日目)1日たった15分10日間で上達!| 説明文を挿入して書いてみる

一瞬で心をつかむできる人の文章術―1日たった15分10日間で上達!」の7日目です。

「ストーリー仕立てで書く」テクニック7日目:説明文を挿入して書いてみる

ストーリー仕立てで書かれた文章をよく見ると、描写部分と説明部分があることがわかります。
5W1Hや、心のつぶやき、動作、5感といった表現方法で書いている部分が描写文です。
一方、説明部分では、現在どういう状況になっているのかを説明したり、その人物がそういう人間なのか、たとえば年齢や性別、出身地、性格などを書いたりします。


波乱のロサンゼルス出張の幕開け

「まったく、いつになったら晴れるんだ・・・。」
6月下旬のとある日。
ここ二週間ほど、雨が続いている。
前線の影響だか何だか知らないが、うんざりだ。

今日は特に、朝から強い雨が降っている。
どしゃぶりでびしょ濡れになった靴を滑らせて転ばないように注意しつつ、私は成田空港のロビーを歩いている。

カウンターに並んでいる人の数はまばらで、旅行シーズンにはまだ早いようだ。
100メートルほど先に、同僚の星野さん、石田さん、ジャックさんが一緒に話しているのが見えた。
「まずい、先輩方を待たせてしまった。」
私は急いで彼女たちの元へ向かった。

(ここから説明文)
私たちは、通訳を手配する会社で働いている。
アメリカのロサンゼルスで複数の現地通訳に会う、というのが今回の出張の目的だ。
とはいえ、半分は社員旅行のようなものだ。
ひととおり通訳に会ってスキルや人物像を確かめた後は、ソノマ・バレーやロス観光に繰り出そうと皆で決めていた。
(ここまで説明文)

「遅いですよ、新谷さん。」
予想通り、星野さんから一言クギを差された。
「すみません、雨のせいで駅まで着くのにいつもより時間が掛かってしまって・・・。」
道中、考えておいた言い訳をそのまま伝える。
「まあ、いいですけどね。それより、着いたらまず何食べましょう?ねえ、石田さん。」
明らかにこれからの旅行が楽しみでしょうがないようである。

(ここから説明文)
星野さんは同行者の中でも最年長の女性で、人事課の課長でもある。
極めて合理的な仕事のスタイルと、感情をストレートに表現するその性格から、会社でも畏怖の対象となっている。
(ここまで説明文)

「ロサンゼルスにはおいしいレストランがたくさんあるって聞いてますからね、楽しみです。」
(ここから説明文)
通訳課主任の石田さんが、星野さんにそう答える。
石田さんは人当たりも良く、後輩たちからも慕われている。
星野さんとは全く異なるタイプの女性だ。
(ここまで説明文)

「中華料理はどうですか?何回か行ったことありますけど、鴨肉がおいしいレストランがありますよ。」
(ここから説明文)
中国人の母親とアメリカ人の父親を持ち、社内通訳をつとめるジャックさんは、日本語も堪能だ。
彼も会話に加わってきた。
(ここまで説明文)

「僕は、おいしければ何料理でも歓迎しますよ。ところで皆さん、チェックインはもうお済みですか?」
と私が言う。
すると、
「見て分からないの?(スーツケースが手元にない事を身振りで示す)
あなたを待っている間にとっくに終わってるわよ。
あなたもさっさと行ってらっしゃい。」
星野さんがそう答える。

相変わらず手厳しい。
私は素直に
「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」
と答え、JALのカウンターに向かう。

カウンターに並ぶと、すぐに私の番が来た。
「搭乗券とパスポートをお願いします。」
カウンターの担当者の言う通りに、チケットとパスポートを渡す。
「荷物は預けますか?」
「いいえ、機内に持ち込みます。」
と、答える。

(ここから説明文)
今回の出張は三泊と短期間。
仕事に必要な機材も現地事務所に置いてあるため、荷物は最小限で済んだ。
誰もがそうだとは思うが、私は荷物受取のベルトコンベアで待つ時間が好きではない。
成田からロスまでの搭乗時間は約10時間。
10時間も狭いシートに押し込められたあと、いつ出てくるかもわからない荷物を、足を棒にして待つ。
そんなのは勘弁してほしい。
とはいえ女性陣はスーツケース持参のようだから、結局は一緒に待つことになるとは思うが・・・。
(ここまで説明文)

カウンター手続きが終わり、三人と再度合流。
搭乗時間までは、まだ一時間以上ある。
「まだ時間もあることですから、お茶でもしますか?」
そう私が提案すると、
「賛成!」
と石田さんが乗ってきてくれた。
ジャックさんも、うなずいている。

ところが肝心の星野さんは、
「別にいいけど、遅刻したくせに仕切らないでよね。
それとも、みんなの分おごってくれるのかしら?」
などと皮肉を飛ばしてくる。

いい加減、彼女特有の気分のムラに嫌気がさしていた私は、
「僕みたいな若造が皆さんにおごるなんて、逆に失礼じゃないですか。
それより、星野さんにタカってもいいですか?」
と冗談半分で返してやった。

(ここから説明文)
その瞬間、ざわっ、と空気が凍り付いたような沈黙がその場を支配した。

体感的には10秒以上に感じた沈黙の間(実際は3秒程)、私と星野さんはお互いに無表情で、じっとにらみ合っていた。
(ここまで説明文)

「いま、なんて、いったの?」
ゆっくりと一言一言確かめるように質問してくる星野さんに対し、
「僕がおごるより、一番偉い星野さんがおごった方が自然ですよね、って言っただけですが?」
私は平然と答える。

「ま、まあ、各自で支払いましょうよ。ほら、あそこのコーヒーショップなんてどうですか?席も空いてますよ。」
仲裁に動いてくれたのは石田さんだった。
ジャックさんはニヤニヤと成り行きを見守っている。
どうやら、星野さんの暴政に不満を抱えていたのは私だけではないようだ。

私からぷいと目をそらしてコーヒー店に向かう星野さんの背中を見ながら、私はこの出張の行方を想像してみた。
どしゃぶりのような戦乱が待っているのか。
それとも、ロサンゼルスの青空のように爽やかな平和が訪れるのか。

現時点では、その答えを知る者は誰もいない。

雑感

これで約2000文字。
掛かった時間は、約3時間弱。

私の現状の力量では、ストーリーをきちんと書こうとすると、1時間で700文字が精いっぱいということが分かりました。

このストーリーでは、マンガやドラマの序章のように、次が気になるような終わり方を意識してみました。
最初の章の終わりはこれだけクドく書いてもいいかもしれませんが、毎回こんな予告編的な終わり方はやり過ぎだな、ということもよく分かりました。

次の練習テーマは「喜怒哀楽を表現してみる」です。