大人の作文教室@札幌 2015/01/07 「テーマと取材」 まとめ(講師:佐藤優子氏)

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(出展:とさあち
「大人の作文教室」、第4回のまとめです。

A.講師自己紹介

(以下、講師のお話です)
大学卒業後、求人誌「アルバイト北海道」で企画・編集・取材。
現在はフリーライター。

過去の仕事:
季刊誌「カイ」、「茜色クラリネット公式ガイドブック」、「ポールで歩こう」、「名作 旅訳文庫1 蟹工船」等。
Web媒体では、「北海道書店ナビ」、「札幌市デジタル創造プラザICC」での取材等。

B.取材の基本

B-1) 私のバイブル1:立花隆『二十歳のころ』

(絶版)
・・・アポイントから質問内容、現場での振る舞い等、全ての基礎が裏表紙に書いてある。

1.電話で交渉
  • 手紙よりも、まず直接あたってみる。
  • 最初に「今お話ししてよろしいですか」と尋ねる
  • インタビュー時間は40分くらいと言っておく。
  • (場合によっては1時間、1時間半に伸ばしても大丈夫な半端な時間だから)

2.準備
  • メモを作っておく。
    (取材メモとは別に、聴くべき項目を予め見開き一目で見られるよう、キーワード的に並べておく)
  • 尋ねる内容を前もってFAX等で知らせておく。
  • 予備知識を蓄えておく
    (時代背景、プロフィール等、基本情報の有無で話の流れが大きく変わる)
3.心構え
  • 十(量の事)取材して、原稿になるのは一だと思っておく。
  • 健全な常識に基づいて行動する。間違えたと思ったらすぐ謝る。
4.現場で
  • ラポール(心を開き合う状態)をつくる。そのために、まずこちらの心を開く。
    (ラポールがあれば追加取材も可能になる)
  • 相手の話を「理解する」
    (対象が学者の場合は業績、研究を理解する必要もあるが、心情的な理解が重要。
    相手の中に入ってゆけるか、訊きにくい事まで訊けるかは心情的理解次第)
  • 相手に「わかってもらえる」と思ってもらえれば成功
  • 最初に「今日どれくらい時間がありますか?」と訊いておく
  • 相手がいいと言えば、ある程度の延長は構わない
    (常識範囲内で)
  • (取材内容や時間が)足りなければ二度目のアポを取る
5.質問
  • 「自分ならどうしたか?」と自分の立場に置き換えながら質問を考える
  • 「これだけは訊く」「整理した項目は全部訊く」とかこだわらない。
    (良好な雰囲気、ラポールの中で流れで聴けた話が「いい話」である)
  • 臨機応変で質問を考える。
    (意表を突く)
  • 「●●の時、何をしていましたか?」は有効な質問
  • 当時の相手の姿を想像して、ディテールを補う質問をする。
    (原稿を作る時に活きてくる)
  • テーマにこだわるあまり、他の重要な話を聞き逃さない。
6.質問項目例
  • 生活状況
    (どこで何をしていたか、家庭・家族・経済状態、目標その他)
  • 読書歴
  • 影響を受けた人
  • もう一度当時に戻れるなら何をしたいか
  • ターニングポイント、決断の時はいつだったか
  • 悩み、怒り(喜怒哀楽)
  • 異性関係(友人、家族等も)
  • 当時の日常生活、平均的な一日
  • 後悔している事、失敗したこと
  • 年とともに変化したこと
  • 当時一番大事にしていたもの
  • 人生の中での当時の位置づけ
  • 自活を始めた時期
  • 両親の人間像
  • 若者へのメッセージ
7.その他

これらの事を、自分の両親(や先輩など)で練習してみる。

B-2) 私のバイブル2:井上ひさし『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』

・・・井上ひさしが一般人向けに文章の書き方を教える講座の記録。本人による貴重な赤入れなど。
例:

  • 一人称の文章では基本的に主語(所有格も)は省略可能
  • 意味の合わない接続詞を使わない

など。

B-3) 私のバイブル3:共同通信『記者ハンドブック』

・・・文体揃えるのに有用。用語統一。

C.取材の実際

  1. 企画(目的・構成)を決め、質問項目を書いた企画書を作る。
  2. 先方に「お願い」をするので、最大限の準備をし、誠意を尽くす。
    全ての基本。
  3. 取材時に失礼がないようにアポイントを取る。
  4. 電話掛けの時間帯チェック

    名乗る

    主旨を説明

    「ご検討いただけないでしょうか」

    返事を待つ(〆切も決めておく)
    ※対象がビジネスマンや研究者などの場合、午前10時頃だとつながりやすい。
    「詳しくはメールで・・・」として、電話自体は簡単に済ませる。
  5. 企画書を送る
    (日時や人選などを検討してもらう、撮影があるなら必ずその旨を書いておく、返事をもらう日を決める)

    取材日時を決めていく
  6. 下調べや道具、身だしなみチェック。
  7. 直前にメールや電話で念押し。
  8. 時間に遅れない。遅刻しそうになったら事前に連絡
    (相手の携帯電話番号を入手)
  9. 取材先の全員に笑顔で対応する
  10. 取材相手と対面:
    改めて企画内容を説明し、お礼を言ってから始める。
  11. 録音する場合、一言断る。
    「お話を録音させていただいてもよろしいですか?」
  12. 質問開始。
    データから入るのが一般的。年齢、出身、最終学歴など。
    事前に考えてきた質問をする。
    訊きたい事はさらに突っ込んで。
  13. 話を聴く。うなずく。
    ×「うんうん」「はいはい」
    〇「ええ、ええ」「分かります」
  14. 枕詞を使う。
    「失礼ですが」「素人考えで恐縮ですが」
  15. 「もう後半ですが」
    相手を安心させて最後に訊きたい事を切り出す上級テクニック。
    「そろそろ取材が終わりそう」という、カメラマンへの合図でもある。
  16. お礼を言って締めくくる。
  17. 濃い内容のコメントをもらえなかったとしたら、それは聴き手の力不足。質問項目を考える事から取材は始まっている。
  18. 「原稿確認がありますので、引き続きよろしくお願いします」
  19. 原稿を書く。
  20. 文体を決める
  21. 推敲する。
    相手の魅力を書き切ったと思う時点まで粘る。
    推敲は、声に出して読んだり、場所を変えて読んだりしてみる。文章が長すぎないかなど。
  22. 文字量を守る。
    制限の無いWebであっても、ダラダラ書きは禁止。読者目線で。
  23. 先方に原稿を送って確認する。
    送る方法は先方に合わせる。
    返事をもらう〆切を書いておく。
  24. 先方から修正が入ったら直す。
    相手の真意を汲み取って直す。
    「直しが無くてもご連絡ください。」
  25. デザイナーとのやりとりや校正を経て、取材記事が完成する。
  26. 紙媒体なら先方に郵送する。お礼状も付けるとより良い。
    Webなら電話やメールで挨拶する。
  27. 読者に届ける。
  28. 「もっとこうしたら良くなった」と前向きに振り返る。
  29. 取材費、レシートの処理。
  30. 〆切を守る。

D.ワークショップ

テーマ:「どんなお正月を過ごしましたか?」
その人ならではのお正月風景を聞き出し、キャッチコピーを二つ作る。

D-1) 二人ペアで取材スタート(各5分ずつ)

D-2) キャッチコピーを作る(10分)

D-3) 取材された側は、どちらのキャッチコピーが嬉しいかを述べる

感想

これまでの「作文教室」の中でも、1・2を争うほど、充実した回でした。
1月誕生日ということで、プレゼントまでもらってしまいました。
毎回これくらい密度が濃いと良いのですが・・・。
大雪の中、めげずに行って良かったです。

外部リンク

講師:佐藤優子氏のブログ「耳にバナナが」