(出展:とさあち)
「大人の作文教室」、第4回のまとめです。
A.講師自己紹介
(以下、講師のお話です)
大学卒業後、求人誌「アルバイト北海道」で企画・編集・取材。
現在はフリーライター。
過去の仕事:
季刊誌「カイ」、「茜色クラリネット公式ガイドブック」、「ポールで歩こう」、「名作 旅訳文庫1 蟹工船」等。
Web媒体では、「北海道書店ナビ」、「札幌市デジタル創造プラザICC」での取材等。
B.取材の基本
B-1) 私のバイブル1:立花隆『二十歳のころ』
(絶版)
・・・アポイントから質問内容、現場での振る舞い等、全ての基礎が裏表紙に書いてある。
1.電話で交渉
- 手紙よりも、まず直接あたってみる。
- 最初に「今お話ししてよろしいですか」と尋ねる
- インタビュー時間は40分くらいと言っておく。
(場合によっては1時間、1時間半に伸ばしても大丈夫な半端な時間だから)
2.準備
- メモを作っておく。
(取材メモとは別に、聴くべき項目を予め見開き一目で見られるよう、キーワード的に並べておく) - 尋ねる内容を前もってFAX等で知らせておく。
- 予備知識を蓄えておく
(時代背景、プロフィール等、基本情報の有無で話の流れが大きく変わる)
3.心構え
- 十(量の事)取材して、原稿になるのは一だと思っておく。
- 健全な常識に基づいて行動する。間違えたと思ったらすぐ謝る。
4.現場で
- ラポール(心を開き合う状態)をつくる。そのために、まずこちらの心を開く。
(ラポールがあれば追加取材も可能になる) - 相手の話を「理解する」
(対象が学者の場合は業績、研究を理解する必要もあるが、心情的な理解が重要。
相手の中に入ってゆけるか、訊きにくい事まで訊けるかは心情的理解次第) - 相手に「わかってもらえる」と思ってもらえれば成功
- 最初に「今日どれくらい時間がありますか?」と訊いておく
- 相手がいいと言えば、ある程度の延長は構わない
(常識範囲内で) - (取材内容や時間が)足りなければ二度目のアポを取る
5.質問
- 「自分ならどうしたか?」と自分の立場に置き換えながら質問を考える
- 「これだけは訊く」「整理した項目は全部訊く」とかこだわらない。
(良好な雰囲気、ラポールの中で流れで聴けた話が「いい話」である) - 臨機応変で質問を考える。
(意表を突く) - 「●●の時、何をしていましたか?」は有効な質問
- 当時の相手の姿を想像して、ディテールを補う質問をする。
(原稿を作る時に活きてくる) - テーマにこだわるあまり、他の重要な話を聞き逃さない。
6.質問項目例
- 生活状況
(どこで何をしていたか、家庭・家族・経済状態、目標その他) - 読書歴
- 影響を受けた人
- もう一度当時に戻れるなら何をしたいか
- ターニングポイント、決断の時はいつだったか
- 悩み、怒り(喜怒哀楽)
- 異性関係(友人、家族等も)
- 当時の日常生活、平均的な一日
- 後悔している事、失敗したこと
- 年とともに変化したこと
- 当時一番大事にしていたもの
- 人生の中での当時の位置づけ
- 自活を始めた時期
- 両親の人間像
- 若者へのメッセージ
7.その他
これらの事を、自分の両親(や先輩など)で練習してみる。
B-2) 私のバイブル2:井上ひさし『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』
・・・井上ひさしが一般人向けに文章の書き方を教える講座の記録。本人による貴重な赤入れなど。
例:
- 一人称の文章では基本的に主語(所有格も)は省略可能
- 意味の合わない接続詞を使わない
など。
B-3) 私のバイブル3:共同通信『記者ハンドブック』
・・・文体揃えるのに有用。用語統一。
C.取材の実際
- 企画(目的・構成)を決め、質問項目を書いた企画書を作る。
- 先方に「お願い」をするので、最大限の準備をし、誠意を尽くす。
全ての基本。 - 取材時に失礼がないようにアポイントを取る。
- 電話掛けの時間帯チェック
↓
名乗る
↓
主旨を説明
↓
「ご検討いただけないでしょうか」
↓
返事を待つ(〆切も決めておく)
※対象がビジネスマンや研究者などの場合、午前10時頃だとつながりやすい。
「詳しくはメールで・・・」として、電話自体は簡単に済ませる。 - 企画書を送る
(日時や人選などを検討してもらう、撮影があるなら必ずその旨を書いておく、返事をもらう日を決める)
↓
取材日時を決めていく - 下調べや道具、身だしなみチェック。
- 直前にメールや電話で念押し。
- 時間に遅れない。遅刻しそうになったら事前に連絡
(相手の携帯電話番号を入手) - 取材先の全員に笑顔で対応する
- 取材相手と対面:
改めて企画内容を説明し、お礼を言ってから始める。 - 録音する場合、一言断る。
「お話を録音させていただいてもよろしいですか?」 - 質問開始。
データから入るのが一般的。年齢、出身、最終学歴など。
事前に考えてきた質問をする。
訊きたい事はさらに突っ込んで。 - 話を聴く。うなずく。
×「うんうん」「はいはい」
〇「ええ、ええ」「分かります」 - 枕詞を使う。
「失礼ですが」「素人考えで恐縮ですが」 - 「もう後半ですが」
相手を安心させて最後に訊きたい事を切り出す上級テクニック。
「そろそろ取材が終わりそう」という、カメラマンへの合図でもある。 - お礼を言って締めくくる。
- 濃い内容のコメントをもらえなかったとしたら、それは聴き手の力不足。質問項目を考える事から取材は始まっている。
- 「原稿確認がありますので、引き続きよろしくお願いします」
- 原稿を書く。
- 文体を決める
- 推敲する。
相手の魅力を書き切ったと思う時点まで粘る。
推敲は、声に出して読んだり、場所を変えて読んだりしてみる。文章が長すぎないかなど。 - 文字量を守る。
制限の無いWebであっても、ダラダラ書きは禁止。読者目線で。 - 先方に原稿を送って確認する。
送る方法は先方に合わせる。
返事をもらう〆切を書いておく。 - 先方から修正が入ったら直す。
相手の真意を汲み取って直す。
「直しが無くてもご連絡ください。」 - デザイナーとのやりとりや校正を経て、取材記事が完成する。
- 紙媒体なら先方に郵送する。お礼状も付けるとより良い。
Webなら電話やメールで挨拶する。 - 読者に届ける。
- 「もっとこうしたら良くなった」と前向きに振り返る。
- 取材費、レシートの処理。
- 〆切を守る。
D.ワークショップ
テーマ:「どんなお正月を過ごしましたか?」
その人ならではのお正月風景を聞き出し、キャッチコピーを二つ作る。
D-1) 二人ペアで取材スタート(各5分ずつ)
D-2) キャッチコピーを作る(10分)
D-3) 取材された側は、どちらのキャッチコピーが嬉しいかを述べる
感想
これまでの「作文教室」の中でも、1・2を争うほど、充実した回でした。
1月誕生日ということで、プレゼントまでもらってしまいました。
毎回これくらい密度が濃いと良いのですが・・・。
大雪の中、めげずに行って良かったです。